ハードコアゲーマーに受け入れられるVRゲームの開発

ごあいさつ

こんにちは。これは僕の大学生活の集大成の記事です。つまり、卒業論文相当の記事です。「なんで卒業論文相当の記事をこんなところで書いてるんだよ?」というような疑問があるかとは思いますが、それを書くと長くなってしまうので、また機会があれば、別の記事にまとめようかと思います。

はじめに

みなさんは、VRゲームを遊んだ経験がありますか? 僕は2019年になって、初めて遊びました。Oculus QuestでのVRゲーム作品を遊びましたが、予想以上の体験でした。「VRゲームって言ったって、どうせまだデモみたいなゲームくらいしかないんじゃないの? ゲームの種類も多くないんでしょ?」と思っていましたが、全くそんなことはありませんでした。Oculus Quest内のストアで販売されているゲームも豊富で、大いに盛況していることが伺えました。僕は『Beat Saber』というリズムゲームと、『SUPERHOT VR』というアクションゲームをプレイしましたが、その2つとも、VRであるということを最大限に活かそうという工夫が見られ、とても興味深いゲームプレイだったことを覚えています。

しかし、ここで皆さんに見ていただきたい資料があります。VR関連の調査を行っている株式会社Moguraの情報サイトによる、VR関連調査・統計まとめ 2019年の予測や国内の認知度など という調査結果によると、2018年当時のVRヘッドセットの日本における保有率はわずか3%であり、まだまだニッチな市場であるということが伺えます。

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僕の今回の研究は、「なぜVR機器の需要が少ないか?」ということを考え、そこから「VR機器が普及するためにはどうすればよいか」ということをゲームデザインの観点から考え、検証していくことを主としています。

ゲーム作品が普及する条件

アメリカに本社を置く、エレクトロニック・アーツ社は、ゲームを頻繁に遊ぶプレイヤー(以下、ハードコアゲーマー)がゲーム作品を認知し、面白いと思うことで、一般層にクチコミのような流れで普及していくと提唱しています。参考文献:「ヒットする」のゲームデザイン ―ユーザーモデルによるマーケット主導型デザイン

エレクトロニック・アーツ社によるユーザーモデル

EAユーザーモデル.png

ちなみに、エレクトロニック・アーツ社のユーザーモデルにおけるハードコアゲーマーの定義は、以下のようになります。

EA社のユーザーモデルによるハードコアゲーマーの定義

  • ネットや情報誌でゲームの情報を手に入れる
  • 体験版をプレイする
  • 毎年25本以上のゲームをプレイする

なので、ハードコアゲーマーにウケるVRゲームを作れば、VRの普及に貢献できるかもしれないというのが、僕の考えです。

今回はこのユーザーモデルを参考に、ハードコアゲーマーにウケるゲームの開発を進めています。

ハードコアゲーマーに受け入れられるゲームの条件とは

ここからは仮定の話になります。今回の研究は、「EAユーザーモデル」という前提があるうえで、ハードコアゲーマーに受け入れられるゲームの条件をいくつか仮定し、それを検証することで、ハードコアゲーマーに受け入れられるVRゲーム作品はこのように作れば良いのではないか、ということを探っていく研究になります。もちろん、最終的な目標はVRデバイスの普及ですが、それは長期的な施策が必要になるうえ、本当に「この研究によってVRデバイスが普及したかどうか」という貢献度についての結論が得難いため、本研究の趣旨には含めておりません。本研究はあくまで、「ハードコアゲーマーにウケるVRゲームってなんだ?」の調査について重視しています。

研究の流れ.png

興味深い選択肢

Sid Meier’s Civilization などのゲームデザイナーを務めるシド・マイヤー氏は、「良いゲーム」をデザインする際に、「Interesting Decisions(興味深い選択)」というものがあり、プレイヤーの行動の選択によって、ゲームの展開が大きく変化していくものが、良いゲームであると唱えています。参考文献:Game Developers Conferenceでのシド・マイヤー氏の公演

選択というと、ノベルゲームでの選択肢や、シミュレーションゲームでの選択など、静的に存在する選択肢をイメージしやすいかと思いますが、アクションゲームなどでも選択は存在します。どのように移動するか、どのように攻撃するか……という意思決定をリアルタイムに行っていきます。次に、その選択をいかに興味深いものにしていくかという問題ですが、それを「リスクとリターン」によって設計します。

リスクとリターン

『星のカービィ』シリーズや、『大乱闘スマッシュブラザーズ』などのディレクターを務める桜井政博氏は、リスクとリターンの駆け引きがゲームの楽しさを引き出していると語っています。参考文献:ゲームの面白さを生み、より高めるための法則とは?──『カービィ』『スマブラ』の生みの親・桜井政博氏による研究の集大成となる講演をWeb上に再現【若ゲのいたり・特別編】

これは、プレイヤーの行動に対して「あちらを立てればこちらが立たず」という状況を作り出すことであると説明されています。その中でプレイヤーが打開策を探りながら操作していく様子を、桜井氏は「ゲーム性」と名付けていました。

今回制作したゲームにおける「興味深い選択肢」と「リスクとリターン」

先述した条件がハードコアゲーマーに受け入れられる条件なのではないかと仮定し、それらを応用したVRゲーム『Universe Frame』を制作します。最初に、このゲームがどのようなゲームかを説明し、その次に、このゲームの中に上記の条件をどのように組み込むかを書いていきます。

VRゲーム『Universe Frame』の説明

本作品は、無重力の宇宙空間を自在に移動し、敵をレーザービームで破壊して遊ぶ、VRシューティングアクションゲームです。デスクトップ版は以下のURLから遊べます。Xboxコントローラーが必須ですが、もしよろしければ遊んでみてください。

Universe Frame デスクトップ版

興味深い選択

本作品では興味深い選択を「プレイヤーの行動」と「敵の行動」の二種類によって生み出そうとしています。敵の種類に関しては

  • 遠距離から攻撃する敵
  • 近距離から攻撃する敵
  • HPが高い敵
  • 移動速度が速い敵

の、大きく分けて4種類が存在します。それらをプレイヤーは

  • どの敵から破壊するか
  • 遠距離で戦うか
  • 近距離で戦うか
  • 通常射撃で戦うか
  • ホーミングレーザーで戦うか

などの選択の中から、最適解を探してステージを攻略していきます。こういった選択の中に、リスクとリターンを設計していくことで、ゲーム性を高めていきます。

リスクとリターン

ここでは、先述したプレイヤーの行動に対して、それぞれリスクとリターンを設定していきます。

近距離で戦う場合

リスク:敵の攻撃も激しくなり、敵の攻撃が当たりやすくなります。

リターン:自分の攻撃も当たりやすくなります。ロックオン範囲に敵を置くことができるので、安定してホーミングレーザーを敵に当てることができます。

遠距離で戦う場合

リスク:自分の攻撃が当たりにくくなります。ロックオン範囲に敵を置くことができずホーミングレーザも発射することができません。

リターン:敵からの攻撃を避けやすくなります。偏差射撃さえ上手にできれば、ノーダメージクリアも十分可能です。

通常射撃で戦う場合

リスク:敵も移動するので、それに合わせて射撃方向を微調整して発射する必要があります。

リターン:無制限に発射できます。

ホーミングレーザーで戦う場合

リスク:敵をロックオン範囲に収めなくては発射できません。発射してから次にホーミングレーザーを打つ場合には、10秒程度のチャージが必要です。

リターン:95%くらい命中します。敵のロックオン数は無制限ですので、プレイング次第では一回のホーミングレーザーで殲滅も可能です。

ついでにVRならではの機能も入れたい

上記のものは、言ってしまえばVRゲームでなくとも使えるゲームデザインの話です。どのようなゲームでも使えます。開発環境もなんだって良いです。しかし今回作るゲームはVRゲームなので、多少はVRゲームでないとできないことも入れてみたいです。ということで、以下のものを機能・演出として入れてみました。

宇宙空間にいるような浮遊感

VRヘッドマウントディスプレイを装着するので、せっかくならばそのまま自分が宇宙空間に放り込まれたような感覚を与えてやろうと思いました。そのため、ゲーム空間上は無重力・空気抵抗がほぼ無い環境になっています。プレイヤーは自身の操作による推進力でのみ移動できるので、慣性がかかるような、ふわふわとした感覚に陥るはずです。

頭を動かす操作

VRというと、やはり視覚のジャックが重要になります。ただの大画面で操作しているだけでは物足りないので、頭を動かし、視点操作することをゲームの中に組み込みます。頭を動かして敵を探せるようにしたり、向いている方向に対して通常射撃のレーザーが飛んでいくようにして、より視点とゲームのつながりを深くしました。

検証方法

この研究の最終目標は「ハードコアゲーマーにウケる」です。最初の方に紹介したEAユーザーモデルが定義するハードコアゲーマーって、なかなかいないんですよ。みなさん毎年25本もゲーム新作やりますか?? ゲーム情報サイトやファ○通とか見る人も少数派ではないでしょうか。僕らみたいにゲーム漬けの生活を送っていると、世界中の人みんなそういう生活してるんだろうな…とか思っちゃいがちですが、実は世の中の人達はそんなにゲームをやりません。目を覚ましてください。

なので、検証するにはゲーマーのレベルを落としてでもしないと、十分なデータが集まりにくいことは想像に難くなかったです。そんなとき、ゼミの担当の先生ではないのですが、懇意にしていただいている先生から一本の連絡が入りました。

「11月にE-Sportsイベントがあって、そこで大学生のゲーム作品を展示できることになったんだけど、本荘くん展示してみない?」

素晴らしいチャンスだと思いました。E-Sportsイベントに足を運んでいるお客さんであれば、多少なりともゲームに対して関心度は高いだろうし、もしE-Sports大会参加者であれば、十分ハードコアゲーマーであると言っても良いのではないかと思いました(毎年25本も新作をやっているかどうかは別にして)。というわけで、今回の検証方法は、2019年11月17日開催の「E-Sportsイベント2019 in TSUTAYA琴似店」の参加者に協力してもらい、本作品をプレイしてもらって、そのアンケート結果から検証する、ということにしました。

アンケート結果

アンケート①:このゲームは面白かったか

アンケート.png

かなりざっくりしたアンケートですが、ゲームのアンケートであればこんなものかと思います。結局、ゲームというのは面白いかどうかだけが評価として残ります。なにがどのように面白かったかを一般の方に問うのはナンセンスかと思いました。それを考えるのは我々開発者だけで十分です。結果としては概ね高評価でした。問題は、先述した「興味深い選択肢」「リスクとリターン」の設計がちゃんとプレイヤーの方に汲んでいただけて、考えることができて、操作に工夫を生み出せたかどうかがわかりにくいことです。アンケートという評価方法自体がそれに向いていない感じもあります。

アンケート②:このゲームの良いと思った部分

アンケート1.png

うーん……やはりVRゲームで検証しようとすると、そっち側に寄ってしまうというか……なかなかゲームデザインの工夫の方に注目してもらえないというか……。ゲーム内容的には概ね高評価を頂いているような感じなのですが、研究的にどうなのか、という感じは否めません。

アンケートからの考察

ゲーム作品に対しての評価は、おおむね高評価をいただけたと思います。展示している際にも、楽しんでプレイしていただいている様子を確認できました。それはゲーム開発者としては本当にありがたいことで、励みになります。しかし果たしてこのゲームが「ハードコアゲーマーにウケる」という目標を満たしているか。仮にその目標を満たしていた場合、その要因はどこにあるか。という疑問が残る研究になってしまいました。この研究を継続させる場合、ゲームをプレイしてもらった際の評価方法を見直す必要があるかと思います。プレイ後のアンケート方式ではなく、プレイ中の様子をひとりひとり観察してみるとか、どのような操作をしているかを確認するだとか、その操作に傾向があるかどうか……など、アンケートだけでは見えない情報が必要だと感じました。

次に見えてきたVRゲームとしての課題

VR酔い対策

本作品ではUIとカメラの距離を固定し、自分と距離の変わらないものを配置することでVR酔いを低減しようと試みています。しかしまだまだ酔いが激しいです。僕も数え切れないほどプレイをしましたが、頭がグラグラするほどの酔いを感じます。僕の知り合いでVRに精通した方が言っていたVR良い対策の設計は以下になります。

  • 自身と距離が変わらないものを配置すること
  • 等速直線運動であること
  • 回転を加えた運動はしないこと

ということでした。本作品はめっちゃ慣性移動かかるし横回転縦回転キリモミ回転するしゲロゲロに酔います。当たり前でした。でもこれをなくすとこのゲームのアイデンティティが……。何かいいアイデアを考えなくてはいけません。

VRにおけるUI/UX問題

この問題はTwitterなどでもたびたび流れてくるお話で、多くの研究・実践が行われている分野です。本作品においても、UIどうしようとか、操作方法どうしようとか、いろいろ悩んでいるところです。

僕がここで語るのもしょうがないので、いくつか参考用のURLを貼ります。

VR向けUI/UXの検討と、その歴史

VR/ARのUI知見リンクをまとめる

おわりに

これで僕の卒業研究は以上になります。敵の3Dモデルを作ってくれたり、音楽を作ってくれたりした後輩方、アドバイスを頂いた先生方やゲーム会社の方、本当にありがとうございました。そしてもしかしたらこの研究を引き継ぐかもしれないゼミの後輩、よろしくおねがいします。これからもゲーム作っていきます。ありがとうございました。

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